DOCTOR INTERVIEWドクターインタビュー


病気の小さなサインを見逃さないで!
複数の症状が同時に出たら早めの受診を

リウマチ膠原病内科ドクターインタビュー

リウマチ膠原病内科部長 笠原 英樹

    

 皆さんは、リウマチ膠原病と聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか?
 よく知らない、分からない、なんとなく怖い病気と思う方が多いのではないかと思います。リウマチ膠原病は特定の臓器や一つの兆候を示す病気ではなく、ある共通の性質を持つさまざまな病気の総称です。以前は「難病」「不治の病」というイメージがありましたが、近年は診断や治療法が大きく進歩し、良い状態を保ちながら通常の生活をすることも可能となり、格段に予後も良くなっています。
 同科の取り組みや日々の診療に対する思い、知っておくべきリウマチ膠原病の基礎知識、関節リウマチの診断や治療についてなど、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・日本内科学会認定総合内科専門医の笠原英樹リウマチ膠原病内科部長にお話を伺いました。


リウマチ膠原病内科では、どういった診療を行っていますか?

 リウマチ膠原病内科はその名の通り「リウマチ(関節リウマチ)」や「膠原病」を内科として診療する部門です。“リウマチ”はなんとなく耳にしたことがあるかもしれませんが、“膠原病”と聞いても多くの方にはあまり馴染みのない病気だと思います。
 まず、膠原病とはいったいどんな病気なのかを簡単に解説します。膠原病は、ウイルスや細菌などを退治して病気を防ぐ免疫細胞が、何らかの原因で自分自身の健康な組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」と考えられています。自己免疫反応が働く(免疫細胞に異常を来たす)原因として、遺伝的な要因や喫煙、紫外線、ストレスなどの環境因子の関与が疑われていますが、まだ明確に解明されていません。
 膠原病は、原因が突き止められず、適切な診断と治療にたどり着くまで時間がかかることがあります。それは、膠原病が特定の臓器にだけ起こるものではなく、関節、筋肉、皮膚、あるいは肺や腎臓、肝臓、血液、神経などさまざまな臓器や組織に起こるためです。障害が起こる部位によって、多彩な症状がみられます。代表的な膠原病には「関節リウマチ」「全身性エリテマトーデス」「多発性筋炎・皮膚筋炎」「強皮症」「血管炎」「シェーグレン症候群」などがあります。このうち関節リウマチは患者数が最も多く、国内に約83万人います。後ほど詳しく説明しますが、手の指や膝などの関節に腫れと痛みが続き、関節が変形して物を握りにくくなったり、歩けなくなったりする病気です。
 当科を受診される患者さんの症状としては、関節痛や発熱、口渇、ドライアイ、レイノー現象(冷えると指先が白から紫に変化)、日光過敏、尿蛋白や尿潜血、皮疹、筋肉痛などの症状が同時に複数みられることが多いのが特徴です。このように、少し列挙しただけでも症状は病気によってさまざまであり、気になる症状があってもすぐにリウマチ膠原病内科を受診することは難しいかもしれません。膠原病はじわじわと進行し、症状自体も最初は単なる体調の変化によるものと考えられてしまうことが多く、とても気付かれにくい病気です。関節痛や筋肉痛なら整形外科、発熱なら一般内科、皮疹なら皮膚科、ドライアイなら眼科の受診をまず考えてしまうのも当然といえます。しかし、それらの診療科を受診してもなかなか治らず、特に複数の部位・場所に、2つ以上の症状が慢性的に続いているようなら、膠原病が隠れている可能性があります。一つひとつの症状を治療しても全身状態が良くならない時は、リウマチ膠原病内科の受診を考えてみてください。


どのようなことを心掛けて診療にあたっていますか?

 膠原病の診断のためには、血液検査やX線検査なども行いますが、その結果だけで単純に判断できるものではありません。それぞれの病気に特徴的な症状を見逃さず、「どのような症状があり、どのような経過をたどってきたか」といったことを、総合的に見極めることが一番大切です。また、ほかの病気ではないことも、鑑別する必要があります。
 膠原病の多くは、条件を満たすと難病法による医療費助成の対象となります。近年は原因究明や薬の開発が進み、「難病」という言葉にそぐわない場合もあります。ただ、気管支ぜんそくや高血圧のように、一生上手にお付き合いしていく病気が多いのも事実です。それゆえに、患者さんと主治医、医療スタッフとの関係はとても重要です。治療では患者さんの症状はもちろん、患者さんの生活背景や考え方、価値観、人生設計なども含めて、一人ひとりに適した方法を一緒に考えていきます。患者さんの困り事や悩み事、患者さんを取り巻く状況は、じつに多種多様です。大きなストレスを抱えている方や非常にナーバスになっている方も少なくないですから、患者さんの話をよく聞き、丁寧なコミュニケーションを心掛け、患者さんの立場に立った心の通った診療で、患者さんがより良い人生、自分らしい幸せな生活を送っていくための適切な治療やサポートに全力を尽くします。
 膠原病では、ほぼすべての臓器に障害が起こり得ます。また、臓器以外にも頭皮、皮膚、唾液腺、涙腺、関節、爪なども診療の対象となります。そういった全身に起きる症状や合併症、副作用に対する対処も重要で、それらは当科単独でどうにかできるものではありません。多くの診療科、とりわけ呼吸器内科、消化器内科、腎臓内科、糖尿病内分泌内科、整形外科、皮膚科、眼科と協働して診療を行っていく必要がありますが、その点で当科は23の診療科を擁する総合病院の中にありますので、患者さんの全身を診られる各専門医が揃っており、また、急に病状が悪くなったり、肺炎などの感染症にかかったりした時もすぐに対応できる環境・体制が整っていることは、患者さんにとって大きなメリットだと思います。もちろん平常時も、各診療科と密接に連携し、患者さんに最良の治療法が届けられるよう舵取りしていきます。


関節リウマチについて教えてください。

 手指や肘、膝など、さまざまな関節に炎症が起こります。腫れや痛みが生じることによって、うまく動かせなくなる病気です。症状が強くなると起き上がる、座る、歩くといった動作が困難になり、日常生活にも支障をきたすようになります。
 関節が曲がりにくい、関節が腫れている、関節が熱を持っている。重いものを持つと手首がズキンと痛む、階段の上り下りで膝がズキンと痛む。起きて15分ぐらいは指がこわばって動かない、手がギシギシする、全身がだるくて動きづらい、体が鉛のように重い。ボタンを外しにくい、箸が上手に使えない、靴紐を結びにくい、ペットボトルなどのキャップを開けにくい、ドアノブを回しにくい、フライパンや鍋が使えない、歩くと足指の付け根が痛い。このような症状が現れたら、それは関節リウマチのサインかもしれません。全身の関節に症状が出る可能性がありますが、指の関節など比較的小さな関節に起こりやすく、左右の同じ関節に症状があらわれることも多いです。運動で関節を酷使した、けがなどの原因が思い当たらないのに、関節の腫れや痛みが長く続いていたら、関節リウマチが疑われます。
 かつては炎症を上手にコントロールする治療法がなかったため、一生治らずにいずれ日常生活が制限されてしまう病気だと思われていました。仕事や妊娠・出産をあきらめなければならないことも多くありました。いわゆる難病であったわけですが、近年、特にこの20年間ほどで関節破壊の進行を抑える薬が次々と使えるようになったことと、早期診断の精度が向上したことによって関節リウマチ治療は格段の進歩を遂げました。患者さんがリウマチを原因に「仕方ない」「無理だから」と思ったりあきらめたりするシーンは以前と比べると格段に減っています。
 治療の目標は、症状のない状態、病気の活動性がない状態を目指します。これを「寛解(かんかい)」といいます。まずは、今ある関節の痛みや腫れを取り除き、関節破壊を進行させないことが重要です。仕事や出産、育児など、患者さんのライフスタイルで大切にされていることを考慮しながら寛解を目指し、寛解を維持する治療を続けていきます。
 リウマチに画期的な治療効果をもたらしたのが、「生物学的製剤」(バイオ医薬品)という薬です。ほとんどの生物学的製剤は、サイトカイン阻害薬です。サイトカインとは、炎症や免疫機能などに関係する物質の一つです。関節の炎症を引き起こす特定のサイトカインの働きを抑え、炎症や関節破壊が進行するのを防ぎます。また、免疫細胞を活性化する酵素(JAK)の働きを抑える「JAK阻害薬」という飲み薬も登場し、生物学的製剤と同等かそれ以上の効果を上げることが確認されています。
 ただし、治療の効果を最大限に得るには、早期発見・早期治療が何よりも重要です。早期に治療を始めることができれば、関節の変形・破壊を防ぐことができるほか、すでに関節の変形が進んだ患者さんにも痛みの緩和や症状の改善が期待できます。そのためにも、先に挙げた症状や思い当たる症状があれば、我慢したり放置したりせず、リウマチ専門医の診察を受けてもらいたいと思います。


関節リウマチ以外の代表的な膠原病について教えてください。

 体の広い範囲に様々な炎症が起きる難病が「全身性エリテマトーデス(SLE)」です。「ループス腎炎」と呼ばれる腎炎や頬部や鼻にかけて蝶が羽を広げたような紅斑(蝶形赤斑)が出るのが特徴です。腎炎は患者の8割ほどに起こります。このほか、発熱、関節炎、脱毛、口内炎、心膜炎、胸膜炎、肝炎、腸炎など、頭のてっぺんから足まで体中にさまざまな症状が起こります。
 肩や太ももなどの筋肉に炎症が起こる「多発性筋炎・皮膚筋炎」は、筋力が弱って日常生活に支障をきたします。多発性筋炎は筋肉に強い炎症が起こります。筋炎とともに、まぶたや指や肘、膝の関節の擦れやすい部分の皮膚が赤くなる特有の皮膚症状を併発すれば皮膚筋炎となります。この病気の方は間質性肺炎を合併しやすいのも特徴です。
 強皮症は、皮膚や内臓が硬くなるという特徴を持つ病気で、「全身性硬化症(SSc)」という病名で呼ばれることもあります。突然、手指が白くなる「レイノー現象」で始まることが多いのが特徴で、時間の経過とともに手指から徐々に全身の臓器が硬くなる症状が現れ、肺では「肺高血圧症」や「間質性肺炎」を発症する場合があります。
 全身の血管の壁に炎症が起こる病気が「血管炎」です。血管が詰まった先の組織が壊死するなど、さまざまな臓器に障害が出ます。太い血管が詰まると、その血管の先につながる臓器全体が損傷を受けます。細い血管でも肺や腎臓が冒されれば臓器不全になります。また、神経が傷つけられれば麻痺などが残るケースもあります。いくつかのタイプがある血管炎ですが、いずれも発熱と痛みが主な初期症状で、数週間にわたり続く例が多いです。
 「シェーグレン症候群」は、涙腺や唾液腺などに炎症が起きて、涙や唾液が出にくくなり、目や口の乾燥症状(ドライアイ、ドライマウス)が現れる病気です。疲れやすさや関節痛、レイノー現象がみられることもあります。
 多種多様な膠原病ですが、多くの病気には以前からステロイド薬が使用されてきました。炎症を鎮めたり、免疫反応を抑制したりすることができます。しかし、ステロイド薬のみでは症状をコントロールできない場合も多く、長期に多い量のステロイド薬を使い続けると副作用で困る場合もありました。近年、新たに免疫抑制剤が保険適応となったり、生物学的製剤も、その作用機序の共通性から、関節リウマチ以外の膠原病にも応用されるようになりました。関節リウマチ以外の膠原病についても、格段に治療成績は向上し、予後は良好で生活の質も改善されてきています。医療の進化は日進月歩で、膠原病のメカニズムや原因も徐々に解明されてきており、今後は新たな治療も期待されます。今まで耳にしたことのない病名で診断されると不安になるかもしれないですが、決してあきらめないでと伝えたいです。


最後に読者へのメッセージをお願いします。

 関節リウマチにおいては、関節の骨は比較的初期の段階から虫食い状に破壊されていきます。一度破壊されると、炎症を食い止めても骨が完全に元通りに治るわけではありません。何度もいいますが、早期の受診と治療が、骨の破壊を防ぐ鍵です。ほかの膠原病も、症状や経過の多様性ゆえに、発病に気付きにくいことはありますが、早めに診断して治療することが、後遺症を残さず日常生活を送ることにつながります。
 早期の発見・診断・治療のためには、患者さん自身の受診と訴えが何よりも大切です。膠原病の初期症状はかぜなど、ありふれた病気やちょっとした体調不良の症状に似ており、生活にもさほど支障がないことがほとんどです。しかし、進行すると関節に変形が現れたり、臓器に障害が起こったりするなど、日常生活に不自由を感じるようになっていきます。絶対に覚えておいてほしいのは、複数の症状が、時間差で同時に出ている時は膠原病が疑われるということです。例えば、「発熱と関節痛」「発疹と口内炎」のように、2つ以上の症状が時間差で現れ、それらの症状が長引いている時は要注意です。膠原病は中高年の女性に多いといわれていますが、男性や若い世代でも発症することが少なくないため、どの性別・年代においても油断はできません。病気の小さなサインを見逃さないでください。
 関節リウマチなど膠原病ではないかと心配な方、すでに膠原病と診断されていても病気や治療のことなどで悩み事や困り事があり、現在の状態がうまくいっていないなどの方は、当科がお役に立てるかもしれませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

※文中に記載の組織名・所属・肩書・内容などは、すべて2023年6月時点(インタビュー時点)のものです。

    

         

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