人工膝関節形成術(TKA)

人工膝関節形成術(TKA)について

ひざの仕組み

膝は、大腿骨(ふともも)と脛骨(すね)と膝蓋骨(ひざの皿)の3つの骨により構成されています。体重を支えるために大腿骨と脛骨は軟骨、半月板などを介してがっちりと接しています。これらの骨を靭帯が支え、安定した膝関節が成り立っています。
また、それぞれの骨表面は軟骨で覆われており、軟骨は氷よりもつるつるしています。



変形性膝関節症とは

スムーズな動きを保つには骨の表面にある軟骨が重要な役割を担っています。
しかし、徐々に軟骨がすり減って半月板が傷み、周囲の骨が変化していきます。
その軟骨のすり減りによって生じてくる状態を「変形性膝関節症」といいます。
悪化に伴い、大腿骨が内側に倒れ膝がO脚となっていきます。





原因

加齢、外傷(骨折、靭帯などのけが)、肥満、素因(遺伝)

主な症状
  • ●歩き始めに痛い、階段を降りるのがつらい
  • ●膝が腫れる
  • ●膝が伸ばしづらい
  • ●膝が曲げづらい
  • ●O脚が進んで、脚がガクガクする

レントゲンでの進行度の分類

進行度は通常、5期(北大分類)に分類されます。

Ⅰ期(初期):骨の周囲が硬化し、骨棘(骨のとげ)ができてくる。
Ⅱ-Ⅲ期(進行期):軽度の軟骨のすり減りがみられる。関節の隙間が減少する。
Ⅳ-Ⅴ期(末期):ほぼ軟骨はすり減ってしまって、骨と骨がぶつかって見える。



人工膝関節形成術とは

人工膝関節形成術とは、傷んで変形してしまった膝関節の表面を取り除き、人工関節をかぶせる手術のことです。イメージとしては虫歯の治療のように悪いところを削り、金歯をかぶせることを想像してもらえればよいかもしれません。
膝がとても痛く、上記分類での末期(分類Ⅳ期、Ⅴ期)であること、かつ60歳以上の方に適応があります。膝や他の部位が化膿している場合は、人工関節手術はできません。

人工膝関節(LFA)

当院で使用している人工関節の特徴

当院では、北海道大学 スポーツ・再建医学 安田和則教授と当科 井上らとの共同研究にて開発された、セラミックを応用した人工膝関節(LFA)を使用しています。
通常、人工関節の材料としてはコバルト合金、チタンなどが一般的ですが、セラミックは強度が金属と同等あり、摩擦がおこりにくいため、磨耗による人工関節のゆるみの発生を抑えることができます。(日本メディカルマテリアル(JMM)社製)。
また、汎用されている人工関節の多くは、外国製で外国人のサイズに合わせた人工関節ですが、この機種は日本人の膝から得られたデータを元に開発されているため、外国製の機種よりも日本人の膝に合っており非常に良好な結果が得られています。



透明のテンプレートを作り、脛骨コンポーネントの被覆率の調査を行った。
①はLFA。骨の輪郭にぴったり合っている。②・③は骨の輪郭に合っておらず、十分に覆われていない。



リハビリテーション

人工膝関節形成術後のリハビリテーションで重要なのは、膝の筋力です。特に大腿四頭筋(ふとももの前の筋肉)訓練と膝を曲げる練習が大切です。

1. 膝関節の手術後、早くから曲げ伸ばしの訓練を行います。動かさないでいると、すぐに膝が硬くなってしまいます。はじめは曲げる器械を使って、ゆっくり膝の曲げ伸ばしを行う訓練を行います。さらに訓練室では、理学療法士により膝の曲げ伸ばしの訓練を行います。



2. 仰向けや横向きで膝を伸ばしたまま、挙上する訓練(下肢挙上訓練)



手術後心配なこと

ゆるみ

人工関節は長い年月が経つと、骨との間にゆるみが生じてくることがあります。これが人工関節の最も大きな問題です。
どんなに具合がよくても、最低年1回の定期健診を推奨しています。

感染(化膿)

人工関節が入っている部位に感染(化膿)が起きてしまうと、人工関節を抜去する事になるため、治療が長期にわたってしまいます。当院では感染を予防するために、クリーンルーム(無菌手術)の使用、抗生剤の予防的投与、定期的血液検査などの対策をとっています。

深部静脈血栓症

下肢の静脈に血栓という血の塊ができる合併症は、肺塞栓症という重症な合併症を引き起こします。
日本人では約2割程度に起こりうるもので、当院ではフットポンプを用いた予防を行うとともに、早期発見、早期治療に努めています。万が一起これば、心臓血管外科の医師に治療を依頼しています。

膝の曲がり

おおよそ110~130度位です。はじめは多少痛みがありますが、曲げる練習をがんばりましょう。

違和感

大きな人工関節が入るため、手術後3ヶ月くらいは多少の痛み、違和感、熱感がありますが、次第になじんでいきます。

さいごに

現在では、変形性膝関節症の原因・予防策が少しずつ解明されてきています。画一的な治療で無く、患者さまの状態にあった多くの治療法があります。
膝の調子が気になる方、手術に不安・疑問のある方は気軽にご相談ください。

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